【ゲーム紹介】イースVIII -Lacrimosa of DANA-:漂流の果てに待つ、心震える冒険

「気づけば夢中になっている」。そんなゲーム体験に、どれくらい出会えるだろうか。『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』は、まさにそうした没入感の塊のような作品だった。
私がこの作品に最初に触れたのは2016年のPS Vita版。当時はそこまで大きな期待をしていたわけではなかった。けれど、プレイし始めて数時間、気がついたら時計は深夜を回っていた。アドル=クリスティンが辿り着いた未開の孤島「セイレン島」は、ただの舞台設定にとどまらず、物語そのものを形作る存在だった。
ゲームは“漂流者”として目覚めたアドルが、仲間たちと力を合わせて島からの脱出を目指すというサバイバル調のRPG。しかし、それだけでは終わらない。この作品の本質は、「ダーナ」というもう一人の主人公が登場してから一変する。時を超えて交差する2人の物語が、プレイヤーに深い感情のうねりをもたらすのだ。
PS Vita版はハードの制約もあり、グラフィックや一部演出に粗さがある部分は否めなかった。けれど、それ以上にアクションの手触り、テンポの良さ、探索の中毒性が秀逸で、快適な操作性と演出に引っ張られるようにゲームを進めてしまう。「このボスを倒したらやめよう」が何度も裏切られた。
そして2017年、PS4版の登場でこのゲームは一気に完成度を高める。グラフィックは大幅に強化され、フレームレートは安定の60fpsへ。迎撃戦や制圧戦といった新要素も加わり、より戦術性とリズムが増した印象だった。
私もPS4版で2周目に挑戦したが、体感としてまるで別ゲームだった。戦闘中の切り替えや回避・ガードの気持ちよさが格段に増し、特にダーナの3スタイル(イクル・グラティカ・ルミナ)切り替え戦闘が爽快感の塊だった。BGMもシリーズ屈指の名曲揃いで、「夜明けのダーナ」や「You’ll See Out the End」など、今でも聴くだけで当時の情景がよみがえる。
その後、Switch版が2018年に登場。PS4版をベースにしており、据え置きでも携帯でも遊べる仕様。画質はやや抑えられているものの、携帯機としての利便性とゲーム内容のバランスは非常に良かった。
そしていよいよ、2025年7月31日に国内PS5版の発売が決定。内容自体はPS4版と同じながら、ロード時間の高速化や安定動作、DualSenseの振動対応など、快適性が大きく向上している点に注目したい。価格はパッケージ版が4,800円+税、DL版が4,400円+税と、リマスターとしては良心的。
ここであらためて感じるのは、イースVIIIがただの「シリーズ最新作」ではなかったこと。これまでのイースシリーズは軽快なアクションに重点を置きつつも、どこかストーリーは控えめな印象があった。しかし今作では明確に“物語の厚み”が加わっている。
特にダーナの運命と、彼女が選んだ未来。その切なさと覚悟には、何度プレイしても胸を打たれる。アクションRPGでこれほど“喪失感”を感じた作品はあまりない。時間を超えた2人の冒険は、プレイヤー自身の記憶にもしっかりと刻まれていく。
正直、私はこの作品を少なくとも3周はしている。でも、PS5版が出たらまた遊ぶだろう。それは単にグラフィックが綺麗になったからではなく、「この世界にもう一度入り込みたい」と思える力がこのゲームにはあるからだ。
総評:時代を超えて遊ばれるべき、名作アクションRPG
『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』は、Vitaから始まり、PS4・Switchと広がり、ついにPS5へとたどり着く、まさに時代を超えた冒険譚だ。
シリーズ未経験の人でも楽しめる作品構造、快適なアクション、そして心に残るストーリー。すべてが丁寧に作られていて、遊んで後悔することはまずないと思う。
まだ触れていないなら、ぜひPS5版からでも構わない。これほど“やってよかった”と素直に言えるRPGは、そう多くはない。
2025年夏、あのセイレン島にもう一度帰ろう。新たな視点と、新たな解像度で、あの感動を追体験してみてほしい。
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